兎芝居Special座談会 <男と女の息遣い> 



水下:水下さん 
工藤:工藤千夏さん(作・演出) 
和田:和田江理子さん(出演) 
川隅:川隅奈保子さん(出演) 
帝国:帝国インタビュアー

お稽古終了を待たせていただく。まだ、お稽古の余韻がのこっている、兎店内。


帝国インタビュアー(以下帝国)お稽古お疲れ様でした。本日は宜しくお願いします。
水下きよしさん(以下水下)お疲れ様でした。よろしくお願いします。
川隅奈保子さん(以下川隅)(えー。なになに?なにが始まるのー?)
和田江理子さん(以下和田)(水さんとこのホームページでね、インタビューとるんだって。)
川隅 (ええー。そうなんだ。)
和田 (そうそう。)

帝国 早速ですが、最初に場所を選んだのは「新宿」だからですか?
工藤千夏さん (以下工藤)「選んだ」と言うよりも、元々私も青年団で皆さんとは(役者連とは)知り合いなんですね。
で、去年NYに居たときにえりちゃん(和田さん。「兎」の「えりこママ」)が遊びに来てくれて、私が(NYで)やってるリーディングに出て貰ったんですよ。
その時に、私がまだ行ったことがない良い店が新宿にあってそこでお芝居とかいろいろやっていきたいから、帰ってきたらとにかく飲みに来て場所を見に来てねって言われてて。
で、戻って来て飲みに来て、「ああ・・是非ここでやりたいな」となって相談が始まったの。
帝国 じゃあ、極端な話、池袋でも錦糸町でも・・・。
工藤 そう。池袋や場所が違えばまた違う話になってるかもしれないですね。
帝国 このお店に来て、中を見てみて、膨らましていくという感じだったんですか?
工藤 ええ。そういう感じですね。
帝国 えーと。(兎芝居の)台本はもう決定稿上がってるんですか?
工藤 ええ、もう台本は上がってます。
和田 八稿まで行った。最初に渡された時点で第二稿で。次の日に「御免。新しくなったから。」って言われて。一週間たったら八稿目だった。
水下 いつ最初に書いたの?
工藤 二月いっぱいで上げるって言ってたのが、3月にかかちゃたの。
水下 十二月にここ(兎)に来て?
工藤 いや、帰国して一月に来て。それから書きたいって言って、二月から書き始めて、一回違う話を書いて捨てちゃって、それでちょっとずれ込んだの。
水下 俺が貰った時点で第二稿だったのか。
帝国 青年団を観た事がなくて大変申し訳ないんですが。 イメージとして台詞が多くて静かな・・・と言う感じなんですが。台詞は多いんですか?
和田 長台詞よねぇ・・・・・。
水下 いや、長いのは君達でしょ。俺は受けるだけだから。長いってたって君達の比じゃない。 自主的に喋ってないし。一番喋ってるのは君だよ。
川隅 ええ?そうかなあ?
水下 君が喋ってるのを受けて、「ああ。ああ」って肯いてるの。
川隅 そうかなあ。もう、時間が固まっちゃってて、わかんなくなっちゃうの。
工藤 出番少なそうに見えてすっごい喋ってる。
川隅 うん。喋りに来てる。
水下 青年団って台詞は多くないよね。
和田 「ああ」とか、「うん」とか。
川隅 怒ることとか、あんまりない。怒鳴るとか。
和田 感情を現にすることがあんまりない。白痴的に笑ってる。
工藤 (表情の)基本を微笑んでるってとこにして、ちょっと笑いを無くすとすごい怒ってる感じになる。今回はあからさまに怒るとか、普段はやらないような「強い」ことをやってます。
水下 どうですか?水下さんとやってみて。
和田 芝居?
水下 稽古とか。初めてでしょ?
帝国 共演は全くの初めてですか?
和田 私は一回あるけど。絡み無かったんだよね。
工藤 何の芝居で?
和田 新版小町風伝で。(平成10年10月 青年団プロデュース「新版・小町風伝」)
一同:へええ。
和田 私ずーっと寝てる役。でもまったく絡み無し。一緒に居ただけ・・・同じ舞台に居ただけ。
川隅 私はすごい、びびってましたよ。
和田 やるまえに?
川隅 そう。ええ、水下さんだあって。
水下 なに言ってんですか。一緒に・・
川隅 一緒に?
水下 利賀で!※
川隅 だって、あれはぁっ。私、若かったし。
和田 それだけ文字にするとやらしいぞぅ。想像しそうだぁ。
※利賀フェスティバルの参加劇団のワークショップの創作発表会で競演?されたそうです。
川隅 私は、もうすごい、びびってました。大先輩ですし。
水下 いやいやいやいや。嘘つき。
川隅 ほんとだよぅっ。
工藤 偶然なんですが、以前仕事の関係で川隅も水下さんもコマーシャルに出て貰った事が有るんですよ。
川隅 えー?
水下 どれどれ?
工藤 東京ガスの コマーシャルで。
なほちゃん(川隅さん)は、キッチン中継編でってので。水さんはショールームに夫婦で見に来てるっていうパターンだったんですよ。
そういう意味では以前一緒に仕事をさせていただいています。えりちゃんは、NYに来てくれてリーディングに参加してもらってるし。
なので私的には、一回は一緒に仕事したことがある人ばかりで信頼してます。 もう、これぞって方とばかり仕事ができてうれしいんです。
(そのコマーシャルは)台詞は音声として出てないんですけど素敵な旦那様って感じで。このCMのオーディションのときに、水さんの評判が良くて。 設定がコピーライターとか業界男性で、素敵な奥さんがいて良いリフォームをする、素敵なパパだったんですね。スタッフが「何ゆえにコピーライターは役者(水さん)みたく素敵じゃないんだろう、ああじゃなきゃねえ」って。
水下 大体なんだってみんなそうじゃない。エンジニアとか格好よさそうだけど、ぜんっぜん格好良くないじゃない。プロジェクトXとか見てると。
和田 フツウーのおじさんばっかりだもんね。
水下 どうすか、一緒にやってみて。
川隅 今?
和田 いやそうな顔した。
水下 あ。やっぱり。
川隅 違う、ちがーう。「負けないぞう」って、みたいな。
和田 絡まないものね。あんまり。
水下 そうね。でも、おもしろい絡みかたするよね。君らは。
和田 私とはね・・・活き活きしてる。
水下 俺とだと活き活きしてないみたい。活き活きしてないんだ、俺とは。ふーん。だ。ぷんぷんのぷんッ。
帝国 前から書いてらしたんですか?学生の頃とか。
工藤 書いてました。典型的な文学少女してました。
帝国 その頃のノートとかはとってあるんですか?
工藤 どんど焼きで焼き去りました。
水下 アメリカ行ってなんか変わった?
工藤 恥かくことを恐れずに書いていていいんだって。
帝国 ああ。
工藤 今からキャリアを始めてもいいんだって。年齢に関係なくて、今から恥かくことを恐れずに書いてもいいんだって。 今から書き始めるのかって、日本に居た頃はちょっと躊躇があったんですけど、もう怖いんだけど怖いなりに吹っ切れたなって感じ。
水下 俺としては、こういうちっちゃいとこだけども、書いてもらえるのはすごい嬉しいですね。作家さんが、俺専用にこれ書いくれて嬉しいですね。でこれでまた、お互いが良ければ一緒にやっていけるなって。やって行けるならば、また場所を広げていかれるし。野望とかね。
帝国 今回はあて書をしてるって言うわけではないんですか?
工藤 ちょっと微妙なんですが。
最初に女性だけの二人芝居を書き始めて、せっかく兎っていう場所を使うんで、関係者と言うか。水さんにも出て欲しいなあって思ってたんですね。 で、そういうことをちょっと思いながら、二人芝居を書いていて、書きながらなんか違うなあって。で、ぽんっっって違う設定が出来て。だから、あて書といえばかなりあて書なんですけど。
水下 だから(男は)俺じゃないかも知れなかったんだよね。
工藤 そう。
和田 で、最初に話しを聞いたときに、私は水さんは忙しいからだめだって一応釘は指してたんだけど。でも水さんに台本渡して。
工藤 うん。いけるんじゃない?って言ってもらって。
あて書っていうか、普段を見ててこんな役者さんだからって言うイメージで書いたんじゃなくて、(水さんの)普段見た事のないとこを引き出してみたいなってとこをあて書してる感じ。
水さんにはなるべく花組芝居っぽくないことをさせたくて。観たことが無い水さんが観たくて。逆に女優陣には日頃青年団ではあんまりやらないような事を敢えてやってもらいたいなって意図的に。
水下 まあね。だから。それがお互いに実になれば面白いんだよね。
で、お客さんもぎゅうぎゅうにしないで、余裕を持って贅沢に観て欲しいなって思うんですよね。

<< 空間の怖いとこ >>  

帝国 「兎」という狭い場所でお芝居をしたら、役者とお客の距離って凄い短いじゃないですか。
お客さんによっては、あんまりに役者さんが近くて逆に自分が緊張しちゃって、楽しむより緊張しっ放しだったって聞くことがあって。じゃあそれは役者の側からしたら、どう感じるんだろう?と。
和田 興奮する。面白い。
水下 やる側としては距離感は大事かなぁって思いますけどね。
帝国 普通の劇場だと舞台が有って、通路が有って、客席ですよね 結界じゃないけど、役者が居る場所・お客側の場所ていうのが見えないけど線引きみたいなものが有るじゃないですか。
水下 そうね。それは有るよね。
帝国 そう言うのはこういう小さいとこだと感じにくいですよね。
工藤 ええ。
帝国 そうなると、お客が舞台にも入り込んで来てしまうんでは? 舞台の場の空気にお客も混じって邪魔になったりとかあるんでしょうか。
水下 うーん。それは、やってみないとわからないんですけど。ただ、入り込んで来ても受け止められるようなね。逆に取り込めるような。 お客も取り込んじゃってるんだけど、でも違うところに(芝居が)あるみたいな。
(お客さんは)お芝居の外なんだけども芝居的には取り込めたらと。

水下 (ここで帰ろうとする川隅さんに向かって)じゃ、売り込みして。
川隅 え。
水下 大変でしょ?忠臣蔵もあるし。
川隅 団祭りに。忠臣蔵で出るんですけど、どっちも系統的には同じキャラなんですようう。 
※『忠臣蔵・修学旅行編』:2003年5月21日(水)〜25日(日) 6回公演
http://www.seinendan.org/(青年団トップ頁)から、団祭りの公演案内を参照下さい。

水下 そうなの?
川隅 なんかねえ。
水下 じゃ、両方観ないと。
川隅 お客さんが?
水下 そう。
川隅 そうですね。両方観ていただいて。ちょっと違う、違いを見つけて下さい。 切れっぷりは一緒なんですけど。どっちも・・・。
兎芝居は劇場には無い臨場感が在ると思いますので、ぜひお楽しみにいらして下さいっ。

−−川隅さんが先にお帰りになりました。−− (話題を兎芝居に戻して)

帝国 芝居のスケジュール的にはかなりタイトですよね。一日3回公演の日も有りますから。
水下 毎回同じで居られるかってのはあるんだよね。やってることは同じ芝居なんだけど。
工藤 これだけ狭い空間だと、お客さんの反応によって芝居が変わってきちゃう怖さとかあるんですよ、 やっぱり、お客さんの反応の違いが、劇場とはちがって、ダイレクトになってくると思うんですね。それこそ、お客さんの息づかいね。
水下 だから、お客によって変わらないでいられるかってとこね。 お客を無視するんではなくて、意識しないでいられるかとか。観せてるって気持ちが全面にでないように。
工藤 青年団の芝居の感想でよく、「透明人間になって壁から覗き見てるって感じがしました」ってのがあるんですね。その、「覗いている」って言う感じを体感してもらえたらと。
こうやって、何回もここでお稽古をしていると、どんどんアイデアが出て来てすごい可能性が浮かんで来て。空間が掴めて来て、毎日発見があって。嬉しいですね。
水下 例えば、こういう狭いとこで、お客の「飲む」っていう空間を次は「観る」っていう空間に移行させるってのも手法として面白いかなぁーって、思いますね。
帝国 お客もこの距離は観るのはすごい怖いなと。お客も緊張があるなと、思いますね。
工藤 そうですね。
帝国 劇場だと、椅子に体預けて、リラックスして観ることが出来るけれども。この空間だと、もう。役者の気迫がダイレクトに伝わって来ちゃうなあと。楽しみなんだけど怖い気がします。
水下 まあ、観る人は、どう観るかは個々の感覚だしね。すごい、「芝居芝居してる」って思うかもしれないし。
帝国 今、やってて自分の好きな台詞はあるんですか?
和田 もちろんもちろんあります。
千夏ちゃんの脚本を読んでて、必ず、この台詞は言いたいっていうのがある。
水下 こういうとこでお芝居をやってるのって、(やってるとこではやってるかもしれないけど)あまりないですから新しい体験として受け止めてもらえれば嬉しいですね。
帝国 どうやって観ればいいんだろう? こういう空間での芝居を観る経験がないんで、どうやって居ればいいんだろう?って。で、観ちゃって、一体何を観たんだろうって混乱しちゃったらどうしよう。
水下 そうね、みんなどうやって期待して来るかわかんないけど。えっ?えっ?ってとまどって、どきどきして最後まで芝居がわけわかんないって思う人もいるかもしれないしね。
工藤 話の展開早いし・・・・。「訳わかんない」ってなる人がいるんだろうなあ。
水下 そうだね。でもそういうことも言ってもらえるのも面白いよね。
工藤 飽きないと思います、ってことは言えます。
水下 短いしね。
帝国 30分ですよね。
水下 でもわかんないですよ、30分でも長いと思うことはあるし。
帝国 通常芝居の上演時間が一時間半前後が多いじゃないですか。上演時間が30分って聞いて、えー短いなって思ったんですけど。
水下 やる側と、観る側の時間は違うじゃない。 一時間の芝居でも3,4人がそこで出てて5分でもつまんなけりゃ、もう長いんだからそこで。
帝国 まあテレビアニメとかは、毎週30分一話完結してるし。
工藤 アメリカで面白かったのは、テンミニッツシアターっていうのがあって、実際は15分から20分くらいなんですけど短編を一晩でたくさん上演するのがあるんですよ。
帝国 コント?
工藤 うーんシリアスでもコミカルでも。シチュエーションコメディみたいなのもありで。 そう言うのを観て来て。一時間、二時間やらないと芝居じゃないっていうわけでもないのだと。短時間でもありなんだと。
歌舞伎なんかも、舞踊劇なんて30分とかで成立してたり、落語もそうですよね。日本は何千円で、2時間3時間を切り売りしているって言う感覚が多いから。それが当たり前って感じに慣らされてるかもしれないですね。
水下 俺は、こう言うカウンターの設定の芝居をやってみたいななんて思っていたの。そこで千夏さんが現れたわけだ。 ドリフの「もしもこんな、バーがあったら」とかってシリーズがあったけど、それのシリアスな感じね。それをやりたいなって。
帝国 な、なるほど。ドリフかあ・・。
そうやって、いろいろといろんなとこ(人)に種を撒いて、ちゃくちゃくと育てる。
水下 育たなかったりしてねーっ。水やり過ぎたりで。周りが育って俺はひたすら変わらなかったりして。
帝国 飲ませ過ぎなんでは・・・。
工藤 演出の経験が少ないんですけど、一緒にやってて。いろいろやってもらえて。でもそんなにやらないでくださいって、ちょっとしょぼーんとさせたり。
水下 まずやってみないと判らないってあるじゃない。でもコミュニケーションしてるから。
帝国 相性?
水下 そうそう。喧嘩しながらでもできる奴はできるから。
帝国 人間のそりが合うとかですか?
水下 そうだね。
工藤 全然、喧嘩っていうか取っ組み合いはないんですけど、そうなってもいいから話し合いができるって思える。そういう信頼はありますね。
水下 わかり合おうって気が無いとだめなんだよな。
工藤 たまに、揉めないと仕事してないって思ってる人がいて、あれは困るなーって思いますけどね。
水下 そうそう、あれは違うね。
工藤 揉めないほうがいいんだから。
水下 問題点は問題点としておいて、なんか、「あるんだ」って思いながら、やってみて。これはこうなったらどう、どう?ってやって、焙り出していけるのが大事なんだよね。
和田 (私は)もう一本やりたいって思える役者さんとさせてもらえてるって感じかな。
工藤 今回はすごい時間が短くて、時間掛けて煮詰まり切るって感じではないんだけど。
水下 その(準備期間が)短いぶん、濃いよね。
工藤 ずーっと若い頃から観てて観てる側も大人になっていくじゃないですか。 で、小劇場の側もちゃんと年齢を重ねて行けてるのかなって。 大人になった自分が観たい芝居が何本あるんだろうかと。ジャンルは問わない、今の成長した自分が観たいと思う芝居がどれだけあるんだろうかって感じるんですよ。若い人が頑張ってるのは確かに凄いなって思うんですけど。自分の年齢で素直に見つめることができる芝居にして行きたいなって思っています。
帝国 観てるお芝居が全部が全部、面白かったわけではないんですよね。 でも、つまんないと思うにしろ、面白かったと感じるにしろ、感想が出てくるお芝居を観たいなって思ってるんですね、観客側としては。花組芝居が好きで観に行きますけども(個人的には)必ずしも100パーセントおっけーなわけではなくって。あれ?って思うことも出てきたりするわけですよ。私には納得いかないなあって。でもそれがなんだか説明できないもどかしさとかは、感じたりするんですね。 で、何回か同じお芝居でも、違うものでも観続けて、あ、これだって何かがあったときになんか芝居を飲み込んだなって思うんですよ。 水下さんなら水下さんでも、納得いかんなーっと思う部分がやっぱりでてきたりするんですよね。でもそれが何がどーして、なのかがわからない。
水下 それでいいんじゃないかと思いますよ、だから一回観て、「ああ。これが違うんだ」ってすっと飲み込んでる人もいるし、「なんだかな、すごい気になる」とか思う人もいるわけじゃないですか。だからそのなんか、ひっかかる「トゲ」の部分を持たせたいなと思うんですよね。
水下 お楽しみに。

帝国 本日はありがとうございました。
水下:和田:工藤:有難うございました。




HOMEに戻る