お疲れ様でございます。お稽古は順調ですか?
順調ですよっ。
どうやってお稽古してるんですか?
基本的には4時間4時間で、『草迷宮』やって休憩して『日本橋』とかその逆とか。
以前の鉄塔と星犬の時は、「演出と役者なので、違うことをやっているから掛け持ちしてても切り替えは難しくない」っておっしゃってましたけど、今回は如何ですか?
んー、まあ『草迷宮』は(メインでは)出てないし、基本的には(俺は)『日本橋』だからね。
『日本橋』では配役変わりませんでしたね。
いいんじゃないですか?愉しいですよ。今回、台詞がちょっと短くなってるんですよ、実は。時間の都合なんですけど。『日本橋』は短くなって、逆に『草迷宮』は長くなってます。
まあ、観てるとそんなに違和感はないと思うんだけど、やってる当人にはね。改めて昔のビデオを見直すと、あ、ここがこれだけカットになったのかって思いますよ。内容としては特にカットになってないので個々の台詞がちょっとずつてとこですけど。
『日本橋』、懐かしいですねえ。
それよりも『草迷宮』がね。ビデオで観て、「ああ、こんなに動いてたんだ、俺」って。「あ、こんなにジャンプしてたよ、すごいねえ」ってね。観ながら、若かったからねーとか話してた。
自分の中では覚えてるもんですか?
うううん、覚えてない。すぐ忘れちゃうからね。
『草迷宮』は大変だよね。タイニーアリスからトラムに動くから。
小屋の大きさが変わるからってことですか?舞台の大きさが変わるってことですか?
そう。全然違いますからね。俳優も大変だけど、それよりも演出が大変でしょう、きっと。
地方へ行くと小屋の大きさが変わりますが大変ですか?
それはまあ変わりますけどね・・よっぽど変われば大変だけど、まあ、そんなには意識してないかな。やっぱり演出家の方が大変ですよ。
装置の大きさはどうですか?
それは変わらない。装置は同じものを持って行くから。多少合わせますけど、なるべく同じようなとこでやってるんで。
(今回の)大阪は初めてなのでわかんないけど、ちゃんとそれなりの空間になりますよ。まあでも『草迷宮』と『日本橋』は作品の性質が全く違うから、それを楽しんで頂ければと思います。
『草迷宮』で自分がやりたい役ってありますか。
んーどれも台詞が長いからねぇ。でも葉越(明)は面白いよね。
今回は最初から二本立てでやるって話だったんですか?
そうそうそう。
三茶(シアタートラム)でやるって決めた時からですか?
そう、みんなで話をした時にそんなこと出来ないかなって、出来たら面白いよねって話が出たの。
でもお稽古も2倍になりますよね。
でも再演だし出来るんじゃないかなって。だけど舞台監督さんとか裏は大変になるよって話になったので、なるべく装置は(2作品で)変えないでってことで考えて、『日本橋』と『草迷宮』なら同じ装置で出来るねってね。
それじゃあ、『日本橋』の装置は以前とは大分変わるんですか?
いえ、そんなに変わらないですよ。
『日本橋』って家ですとか、かなり建て込みしてたような記憶がありますけど。
いえ、全然してないですよ。
え?そうでしたっけ?
前の時もしてないもん。あれ、障子があっただけなんだよ。
あら?すごくいい加減な記憶だ・・・。
ま、そう見えるように芝居が出来ればいいんだけどね。
反対意見は出なかったんですか?稽古が大変だとか。
稽古は再演ものってこともあるし、そんなに大変じゃないよ。まあ、もっと稽古したいなとかはあるけどね。
ともかく役者より演出家が大変だよ。裏方とね。役者は掛け持ちじゃなくて、一本の芝居に出てる訳だしさ。
そんなもんですかね?
だって、一人の男が三人の女と付き合ってても女から見れば一人の男と付き合ってるのよ。その男が演出家だからさ。
男は掛け持ちしてるけど、女は一人と付き合ってると思っていると。
そうそうそうそうそう。大変じゃないんだよ、女は。「会ってくれないわ」って思うだけで。そこが「もっと稽古時間が欲しいわ」ってことね。
この例えで納得していいんですかね(笑)
自分でいっぺんに二本演出することになったら出来ますか?
ああ、出来るでしょ。ちゃんと時間配分が出来れば出来ないことじゃあないでしょ。前にも言ったけど、国語やって算数やって、みたいにそれは切り替え出来るからね。片方考えてる時にもう一方のアイデアが浮かぶかもしれないし、そういう相互作用は絶対あるのでそういう意味でも時間が許せば出来ないことはないよ。
同時に二つを見てる訳ではないからってことですね。
この女の子と付き合ってるんだけど、他の女の子のことを考えちゃう時もあるかもしれないけど。 (一同 笑) この女が「なんで怒ったんだろうなー」って思ったことが、別の女と居る時に「ああ、だから怒ったのか」ってわかることがあるじゃない。で、それはそれで収めといて、また違う時にこの手を使って・・・とか。
判りやすい例えと言っていいのでしょうか・・・。
まあ、時間が欲しくなるけどね、当然。一つの作品を素から作ったとしたら。(今回は)再演だから出来ることだと思いますよ。
DCの時は同じ作品を2チームでやってたから、「片方がやってる時にもう片方が見ていて気がつくことが沢山あった」っておっしゃってましたね、そういえば。
同じ作品はね。だから同じことをAチームで二時間掛かってもBチームは一時間掛からないで出来ちゃう。で、Bチームに「なんでもっとお稽古してくれないのー」って言われたりね。
そうそう。そうおっしゃってましたね。
しかし二本立ては観る方も大変ですよ。
でも面白いと思うよ。ほとんど同じ装置で同じ空間の中で、幻想的な世界と物語の世界と,って。鏡花の中でも違う世界だからね。(1日)通しで観ると面白いんじゃないかな。
ひとつの作品を何度も観たい人は大変ですが。
葛木を演りたいなと思いますか?
うーん・・・
あんまりああいった人間にはなれないですか?
いや、なれなくはないけどね。
男としては葛木と赤熊、どちらが心情的に判りやすいですか?
そりゃ両方判りますけど、赤熊のほうが判りやすいよね、直情だし。
葛木はお姉さんが大好きで、変な話、近親相姦みたいなところが出ないとつまらないから。歳が離れてるからお母さんみたいなもんなんだろうけどさ。(姉の面影を感じている)清葉とは寝たいんだもん。お姉さんが欲しくてしょうがない。
鏡花が書いているそこの部分が出ると面白いし、(自分が)やるんなら出したいよね。清葉も好きだし、清葉を通してお姉さんも好きだしってのが台詞じゃなくて、やってる人間から見えて来ないとなってね。
巡査の役もいいんだよね。言葉がいいのよ、ほんと言葉がいい。
ああいう巡査の役のような台詞がある役って現代に書かれている作品には無いですね。
ないもん。ないない。
『日本橋』の稽古をしてて思ったのがね、ともちゃん(中尾氏)に「現代語じゃないような本をテキストにして(DCの若手に稽古)やってよ」って言われたので、ああ『日本橋』はいいかもしれないなって。登場人物が少ないけど必ず二人でのやり取りがあって、やり取りをしながらで、長い修飾語が入ってたりしてるから。加納の(台)本がまた良く出来ているので、これをテキストにするのが面白いかもしれないなあって。シーン毎で二人か三人ずつで繋がっていく話になってるしね。男同士もあるし男と女のもあるし。これを読みこなすのはシェイクスピアをちゃんと語れるのと同じくらいのことなんじゃないかな。とてもいいテキストだなあと。
台詞の量から言ったらハイライフの方が多いと思いますけど、言い易さなら現代語だし、ハイライフの方が言い易かったですか?
あー、1回やってるからね、こっち(『日本橋』)は。それに日本語だから。翻訳じゃないから。こっちの方が言い易いんだよ。
翻訳ものってやっぱり感じが違いますか?「訳している」って感じになるのですかね。
そうそうそう。日本語じゃない関係代名詞みたいなのが入ってくるからねえ。そんな言い回ししねぇじゃんってなさ。鏡花も(妙な)言い回しはあるんだけど、解るし無理がない。日本語のリズムなんだよ。鏡花独特なリズムで難しくはあるんだけど・・・。
まぁ何本か作品をやってるから少しは親しんでいるし。ハイライフはリズムとか関係なく、現代の外国語を日本語に訳してるからね。翻訳は難しいよね。また翻訳の言葉も古かったから。本自体は2000年前後だから新しいんだけど、訳者は長年カナダに住んでいる年配の方で、演劇が好きで訳者になってカナダ演劇を紹介しているって人なんですよ。
では現代の若者の使ういわゆる汚い言葉はあまり使われていないと?
日本語に直した言葉がちょっと古いなあって感じかな。このいい回しはわかるけど、なんか文語っぽいよねって。
ある意味作家の方だから読み物としてはいいんだけど、演じると言葉が違うなあってとこがちょっとね。
シェイクスピアもそういうところ凄くあると思うよ。英語でやる時は、例えば、花組芝居が京言葉でやるみたいな面白さはあるかもしれないけど、それを日本語にしてどうするんだよってね。英語の面白さは日本語じゃ伝わらないじゃない、韻を踏んでいるのとかさ、もっとスピーディーにしたらいいのかとか。でもあまりカットしすぎると面白くない。
灯りがない時代の話なので説明を必ずするんですよ、それをちゃんと言えるかとかね。でも練習にはなるよね、長い台詞をちゃんと言えるってのはすごいことだと思いますよ。だからやっぱり鏡花の台詞をちゃんと言えるってのは大事なことですよ。
ところでハイライフで「俺のやるハイライフと加納のやるハイライフは違う」って言ってましたね。どの辺りが違うんでしょうか?
違うと思いますよ、全然。まあ、やってないから判らないけど、作ったら「ああ、違うね」って思うんじゃないかな。
水下きよし演出の時は誰がどの役をやるはずだったんですか?
うーん誰になったんだろう。
あれ?「決めてた」って言ってたじゃないですか?
いやほんとに迷ってたんだよ。ディックはね、北沢洋がいいかな?なんて今は思ってるけど。違うっていうのは、俺と加納の経験の違いで、どっちが良いかってことではなくてそういう部分が出るってことなんだよね。
あの舞台は私の知らない、理解出来ない世界で「うわー、やだなー、怖いなー」って拒絶反応が出掛かったりしました。
いやいや、あれは能天気なんだよ、だから「ハイライフ」なんだもん。壊れた奴がいっぱい集まって来てても、それがすごい「ハイライフ」に見えるというか、「なんて素敵なの!これはアリかもしれないわ」ってさ。人生捨てた奴の方が勝ちなのかもしれないってさ。
明日のこと考えない人間はこんなに楽なんだ、とか?
そうそう。まっとうな暮らしをしたいけど、そのまっとうっていうのは、お金をいっぱい稼いで、あとは自分の好きな薬だけ打っていられればいいっていうね。そのためには一回ドッカーンってやっとこうかと。
単純思考ですね(笑)
そう、それが失敗しちゃって、でもすぐに今回は大丈夫だからさぁ〜って。お前達、駄目だよなーって思うよね。
これはコメディーなんだもん。絶対上手く行くわけないじゃん!っていうようなことを真剣にで考えてるってのがおかしいんだよね。
なるほど、コメディーね。もう穴だらけのアイデアなのに、「すっごい素敵なアイデアじゃん、俺達」ってやってるんですもんね。観ていて客席から「ばーか」って笑ってやりたい感じで。
馬鹿の集まりで、お馬鹿な話だからね。日本ではジャンキーって根付いてないけど向こうではあたりまえにいるから。お前らどうせまたこんなことのくり返しなんだろってとこがほんとコメディー。絶対に成功しないんだろなって。
お前らどうやって生きてんだよって感じでしょ。あの中で一番長生きすんのはドニーかもね。立派な泥棒になって、立派な金持ちになってるかもしれないね。
体もちゃんと治ってね。
そうそう(笑)。
花組さんはいろんなお芝居やってますが、「花組芝居」と聞いた時に持つイメージがありますよね。それとはかけ離れた世界で、でも、客演ではなくて花組の人間だけでやっているというところがハナオフの面白さだと思います。
うーん、でもね、「加納さんの作品になってますね。花組芝居っぽいですね」って身内から意見→感想が出たのね。
だからもうハナオフでは加納には演出させない方がいいなって思ったの。加納に演出させる時は、他から役者呼んで花組と混じる感じでやろうって。加納にも言ったんだけど、本公演と同じスタンスになっちゃってるんだよね。演出家と役者のスタンスが。
花組芝居のミニマムだと?
というか、本流なんだよね、ONなの、OFFじゃないんだ。だから、加納が本公演とは違うスタンスで花組の役者とやるときは、前に使っていた『ひかえやぐら』という形態がいいんではないかな。今回やってみて判ったことなんだけどね。
ハナオフで加納に演出をさせるなら他所から俳優を呼んだり女の子を入れてとか、そういうプロデュースにしようと思ってる。そうしたら現場の対応が変わるからまた空気も変わるしね。
また作り上げられる作品も違うってことですね。
まあ、そういう良い発見が出来ましたね。演出の進め方も同じだからね。変えてるのかもしれないけど、同じ人間がやってることだし、受け取る側もずっと一緒にやってるわけだから同じになっちゃうんだよね。
違う女と付き合うなら工夫しなさいよと。
いや、同じ女だよ。同じ女の子なんだけど場所が違うだけだから。場所が変わるとお互い新鮮だから。
相手が違えば手順も違うけど・・・
相手が違うなら手順は一緒でも相手の出方が違うわけだから違うものが出来上がるよね。同じ授業でも同じ手順でやっても先生が違えば違う授業になるじゃない。
今日、この例え方多いですね(笑)
また来年の夏も花オフがあるんでしょうか。
ああ、やりたいですね。今度こそぜひ演出をやらせていただきたいね。
今度こそ乗っ取られないようにしないと。次は加納さんを演出するってのもいいんじゃないですか。
出て見たいとは思うんじゃないかな・・・プレッシャーあるけどねえ、俺が(笑)。
基本的に加納は俳優ですから。めちゃめちゃ俳優ですよ、ほんとに。舞台に立ってるのが本当に好きなんだと思うよ。俺は逆に自分はそんなに俳優じゃないと思ってるから。俺は演出っていうか、観てるのが好きなんだよ。だから舞台に立ってなくても構わないし。みんなが愉しくやってくれれば。
愉しそうな顔が好きなのよ。(演出)やってて舞台に出たくもなるけど、自分の作ったものを面白いと思って演じてもらえて、それを観た人に面白いと思ってもらえたらそれが嬉しい。その人の才能を100%とは言わないけど70%くらい引き出せたら嬉しいんだよ。そういうことの方が好きみたいね。もちろん(舞台に)出るのも好きだけどね。
昔のインタビューでも「自分は見ていたいから」ってよくおっしゃってましたよね。今日の話の中でも「見ていないからわかんないけど」って言い方してましたし。見るということが好きなんですね。
今回(鏡花まつり)は好きな役もあるし出たいけど、(役者では)花組だけ出ていて、演出の仕事が増えたらいいなって思ってる。だから今はすっごく(演出が)やりたいんだよ。あとは自分の好きなお話を話すような表現とかね。
ところで先日のアロハ兄さんはどうでしたか?かなりツッコミもあったようですが。
いやそんな厳しくしないでよ、余興なんだからさぁ。「あら、うまくなったわね、アロハ兄さん」なんて言われるようになるのもまた面白いじゃないさ。
「箍屋は面白い!」って話を2年前のひとりかいでしてましたよね。お稽古は随分したんですか。
しましたよ。(ハイライフ)終わってからすぐ。ビデオとかお手本があった方がいいよね。動きもあるので心情もわかるし。箍屋はなかったんだけとさ。
一人の人間が話していることですが、落語と一人芝居とON-DOKUとはそれぞれ違いますか?
違う違う違うぜんぜん違う。落語がすごいのはね、すっと今の次元に戻ってこられるの。一人芝居みたいに登場人物のやり取りをしてるんだけど、その間に素の感じで「この時代にはですね」って説明を入れたり出来るし、例えば遅れて入ってきたお客さんに「駄目だよ、そこ早く座って」なんて今現在のお客さんの状況に立ち入っても、またすぐ落語の世界に戻れるじゃない。それがすごい。
うーん、例えば、賢治をやるじゃない。情景描写をする時に、それを伝えようと思ってある種の型に嵌るんじゃなくて、「風がびゅううっと吹いてきて・・」って(表情と身振りをつけて)出来た方がいいんですよ。そういうエッセンスが落語の中にすごくあるのでそれを取り込めたらまた変わってくるんじゃないかなと思ってる。
入り込むじゃないですか、朗読って。お客さんもね。あれがもっと身構えないで出来るのがいいな。「あ、飲み物欲しい?カウンターで貰ってきて」って言って、またすっと話に戻れるとかね。そうしたいんだよ。落語は話芸としてそういうことが完成されてるんだよね。
見る方もやる方もそのスタンスが取れてるってことですね。それは以前なさってた弾丸列車みたいな感じですか?
弾丸はまた違うんだよ。弾丸は漫画というかマガジンにしたいの。くだらないことも真面目なことも4コマもいろいろ入ってるじゃない、雑誌って。特集号みたいなのでもいいんだけど、その中に連載もあったりしてさ。マガジンライブにしたいんだよね。なんかライブにするとみんなお笑いに走りがちだけど、そうじゃなくて、政治ネタがあったりくだらないのとかエッチなのもあったりとかさ。そこに音楽もあってね、好きなものだけ拾って楽しんで貰えたらさ。スネークマンショーの立体版じゃないけど。
俺はお笑いでなくて、どっか気持ち悪いような感じに収めたい気持ちがあるのでね。ジングル入れて4コマ仕立てで、つまんなかったら客がブーイングとか。
わははは。
そういうマガジンライブって面白いと思うんだけどなー。でもその流れとかプロットが俺の中で今は出来てなくて。
それがちゃんと出来たらまたやりたいなと。自分に時間がないのでね、やるならちゃんとやらないと。
観に行って「なんか弾丸ってさあ」なんて言われないようにと。
そうそう。
またいつかということで、楽しみにしていますね。それで、どうだったんですか。
何が。
アロハ兄さんは。
あんなもんじゃないですか。
それについては多くを語らないと。また機会があったら出るんですか?
ぜひ米゜朝(ぺいちょう)師匠の下で。もう一生前座でいようかな。
永遠の前座!巧いんだけど前座。いやな前座ですねー。
でも落語は巧いのがいいかどうかって思うんだよね。難しいとこだよ。でも落語はすごく勉強になるからね。
「間」の勉強にいい。早く喋ればいいってもんじゃなくて、お客さんとの呼吸だから。
舞台での「間」じゃなくて、全部の空間の「間」?
そう、そこが落語のすごいとこ。やってる人がお客さんに自分の「間」を受け渡しが出来れば、その空間全体が成り立つんですよ。それがすごく勉強になった。
次回は何をやりたいですか?
暮れだったら富籤の話とかね。
おお。大ネタですね。
なんていったかな、富籤じゃないんだけど、花緑くんがやってたので短いんだけど面白いの。
しかし落語、ほんとにやると思いませんでした。
原川さんがやってくれって言ってくれたからさ。
ゴクネコ、ハイライフ、落語。いろんな水下きよし楽しませていただきました。水下きよしバラエティー月間でしたね。で、まもなくまつりですし。 ところで、再演だと初演の時と意識的に変えようって思うのですか?
変えるんじゃなくて、出来なかったこととか、状況がわかるようになってくるから、深くなるしもっと良くなりたいと思う。
初演でやり切れなかったってことですか?
やり切れなかったっていうのは無いよ、その時は一生懸命やってるから。でももっともっと丁寧にやりたい。感情を丁寧に出していきたい。
例えば初演の時はもう台詞を言うだけでいっぱいっぱいなとこがあるわけじゃない、振り返ってみると。でも1回やってる分、理解が深くなってるから、人間が思う「気持ち」ってものを台詞に乗せたい。すごく丁寧に言葉を言いたい。感情を言葉に込めて言いたいのよ、お孝さんが大好きなんだって気持ちをね。
男としてみたらお孝と清葉ってどっちがいいのかしら?
一緒に暮らすんなら清葉なんじゃない。
遊ぶならお孝がいいとか?
お孝さんは(赤熊の件は)清葉への対抗意識だけでやっちゃったことで、本当に好きになったのは葛木だけだから。で、(葛木が)いなくなっちゃったから気が狂っちゃう。んー、どっちもいい女ですよね。
水下的にはどっちが好きですか?
どっちも好き(即答。)
聞くだけ、無駄だったようですね・・・。
衣装は何か変わりますか?
衣装は変わらないです。
あとは男の悲哀じゃないけども、女房子供を捨てて一人の女を好きになって、それで堕ちて行く・・・のが伝わればいいんじゃないかと。その心情はすごくよくわかるからね。
丁寧に伝えたいって言うのは初演から時間が空いて、自分の中での積み重ねや経験があって、だから出来るっていうのもあるんですか?
そうですね、そう思います。
1回やってるから振り返られるじゃないですか。検証出来るので自分が出したいことが見えてきてるし、テクニックもついてきてるし、自分の体をコントロール出来るようにもなったしとか。そういう意味で再演って面白いよね。
同じことをやってるんだけど、その質をどう高めていくか。自分が生きてきたものが反映されるしね、表現者として。「これをやってればいい」じゃなくて、「こうやったらどうか」って考えるから。
『日本橋』は情念の芝居だからね。それぞれの恋がずれてる、好きになった時がずれてる。で、それを失ってしまった時に、初めて「好きだ」って解る。すれ違ってから、実はこんなに好きだったんだよって想いがいっぱい積み重なっている話なんだよね。『日本橋』は、観てる人に人間の持っている情念を揺さぶる話と感じてもらえるようにしたいんだよね。人間同士の話だから。
好きになったら何もかも捨ててしまうっていうのは判る。それを引き受けて壊れていってしまう人たちがいる。清葉とお孝で一人の人間、葛木と赤熊で一人。裏表だから。
葛木は赤熊を見て、「こんなに人を愛せない。だから巡礼に出る。僕が好きなのはやっぱりお姉さんで、まずお姉さんの事を解決しないとお孝のことを好きなれない。でも、僕はお孝のところに帰ってくるからね」って。葛木もお孝のことが好きなんだよ、清葉じゃなくてお孝。いや、清葉だ、という方もいらっしゃるでしょうが・・・。清葉はお姉さんの影で、お姉さんの影を払拭したのはお孝だから。きっとお姉さんに逢えてたらお孝と一緒になってたよ。でもその前にお孝は狂ってしまったから。
そうやって掛け違えの物語だから面白いんだよね。ああ、ここでこの想いがわかってれば一緒になれたのにぃって。あんな気丈な人が笑って「待ちますよ」って言ってるのに、いなくなった途端に「葛木さん・・・」って言って狂ってしまう、そのすごさとかね。清葉は絶対狂わないからね。だからお孝のほうが可愛いんだよね。
いろいろ鏡花の作品をやっていますね。
花組芝居にはすごく合ってると思いますよ、鏡花の作品は。
自分で好きな役って何ですか?鏡花全体で。
やっぱり赤熊と晃かなぁ。
そういえば鏡花ってみんな恋愛ものなんですね。
そうだよ。お化けと人間の恋だったり。あ、ぼろぼんも好きよ、俺。
天守物語、ですか。朱の盤坊。
あれ面白い。他(の劇団)でもやるじゃない。あれ、赤熊や朱の盤坊は絶対俺の方がいいね。
ははは。確かに他とはちょっと違いますよね。なにせ今回は「まつり」ということで、気楽に構えずに楽しもうと思います。
今、俺が楽しみなのはね、DCさんの『十一ぴきのネコ』!
自分でもやりたいって言ってましたよね。
演出をね。とてもいい話ですよ。またよく書けてるんだ。井上ひさしのひょっこりひょうたん島のエッセンスがいっぱい入ってて、曲も23曲くらい使うんだよ。歌いっぱいあるの、ひょうたん島みたいに。語りみたいな歌も入れて、そのくらいある。
そんなに長い話でしたっけ?最後は大きなお魚釣って食べて幸せになりましたですよね?
それは馬場(のぼる)さんのでしょ。井上ひさしのは違うの。それを元にして作ったんだけど。
猫たちが餓えてて、そこににゃん太郎がやってきて湖に行くといいよってなって・・・で、初演ではにゃん太郎は殺されちゃうの。
『新・十一ぴきのネコ』は11匹全員が死んじゃう。汚染された魚を食べてね。
すごい・・・その時代を映してる・・・
最初のは、ヒーローがいるんだけど、そいつがいると自分たちの手柄にならないからって殺しちゃう。ちょっと怖いの。
現代社会を反映してるけど、芝居はアナログなんだよね。エコーでやってるから。
観に行かれたんですか。
演ってるの。お芝居を始めた頃に養成所の卒公でやってるの。
えええっ!エコーって、テアトルエコーで?
じゃないんだけど、養成所にいたのね。その卒業公演でやって、エコーの人が観に来てくれて面白いって言ってくれたのね。
俺がにゃん太郎やったのよ。
へぇーーーーっ。
で、花組芝居で植本ににゃん太郎をやらせたいの。いいですよ、熱血漢だし。
死なない方の話で?
いやそれはわかんないよ。これは演出をやりたいね。(DCは)関さんがにゃん太郎だからすごく合ってると思うよ。
DCさんにも合ってるし。あー、今年やるんだぁ。来年なら演出やりたいのにーってね。
わはははは。 いいじゃないですか、来年やったら。毎年やるとか。
いや俺はやらないよ、演出だよ。
仇討も昔、いいなと思ってたのに違う作品をやることになって、でしたよね。いろいろ思い入れのある作品を手掛けたいと?
そうそう、まず思い入れのあるものをやりたいんですよ。これやってからじゃないと、やってから死のうと。
その間にやりたいなって作品がまた増えて・・・・
じゃあ、『十一ぴきのネコ』はいつまでも目標として置いといて。目の前の餌のように。
いやいやそれは駄目なの。植本が若いうちにやらないと(笑)
にゃん太郎がおじいちゃんじゃ駄目なのね。
花組にも合うと思うよ、面白いし。男だけでやってさ。
花オフでは少し人数が多いですかね。
それなら大きいところでやらないとね。
今度は演出を加納さんに取られないようにして、ですね。
そうそう。(一同 笑)
でもね、加納に演出させてみたいとも思うんだよ、これが。なんせ才能豊かだから。
さてさて、鏡花まつりまできっとあっという間ですね。
この作品が初めての人も久しぶりな人もいろいろでしょうね。
楽しみにしています。本日はお稽古の最中にありがとうございました。
ありがとうございました。
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