「狂風記」 風は吹いたか?インタビュー!



〜狂風記の記憶〜

帝国インタビュアー:お忙しいところ、有難うございます。
(狂風記は)如何でしたか?

水下氏:なにが。

えーとっ。(公演期間は)二週間くらいでしたっけ?

遠いっ。

は?

アートスフィアは遠いっ。

はあ?

いやあ、品川から歩いたほうがいい距離なんですよ。

はあ。歩いてらしたんですか?

二十分くらいでしょ。変わらないでしょ大崎乗換えでも。浜松町からモノレールでも。

今回は(上演時間が)長いお芝居でしたね。体力的にきついですか?

いや、僕はぜんぜん。市原さんは出ずっぱりだったけど。終わって飲む時間がないのがねー。一番つらい。

なんですって?。

だって、そうでしょ。お芝居やって、一杯飲んで帰る時間がないとつまらないでしょ?

観客の気持ちはそうですが。

役者もそうですよ。ま、三時間っていっても、面白くて帰る時間を心配しなくていいのが一番だけど。

(三時間は)長いなあと思いました。面白かったですけど。

長いと思いますよ。三時間。

本読みに二週間かかってるって、筋書きにありましたが、花組芝居さんでは普通どのくらいやってるんですか?

一週間から十日くらいかな?

そんなにやるんですか?

花組芝居はね。

じゃ、ご自分ではそんなに長いという感じはなかったんですか?

長いんでしょうけど、こんなもんだろうなあと。

台本で読んで話は繋がりましたか?

うーん・・・わかんなくはないんですけどね。ここがこうなってこうなって、って。削った部分に設定説明とかもあったりしたんですが、判らなくはないです。

マゴはその場にいるのに(リグナイトの人達と)繋がり薄いですね。存在しているのに、居ないみたい。 シマさん(志賀圭二郎氏)とか、最初のうちは話をするけど、そのうち誰も声を掛けなくなりますよね。ヒメ以外の人には見えてないのかしら?と思ったんですが。

それは、そういう存在だから。そういう設定なだけであって、その場の人に見えてる・見えてないってのは、受け止めるお客さんの感じ方ですよ。

今回は台詞のやり取りはヒメ以外ほとんどないですね。

ねえ。シマとちょっとあるくらいで。北沢(北沢洋:玉利三郎役)がね。いろんな人と渡りあうじゃないですか。リグナイトも錦様達とも。ああいうのも面白いなあと。

台本は石川淳さんの原作の文体のままですか?

ままです。石川淳さんの文体で、台本を作ってるから大変でした。 でも(文体は)その世界を構築するものだから、削るにしても足すにしてもその人の言葉でないと世界が壊れてしまうので。鏡花なり、谷崎なり、三島なり。その人の世界の文体を変えることができない。


久々に、円形舞台でしたけど。

円形って行っても、客席が円形なんじゃないしなー。

舞台に客席が割り込んでるのは、やりにくいですか?

やりにくい、って・・・うーん。無理矢理作ってる客席だから自分がやりにくいより、お客さんが大変だったかもしれない。(台詞の)声が舞台席の方向には広がらないのでね。

上から見るとすごくきれいでしたね。

そうでしょうね。あの形は。

衣装は、ズボン二枚はいてたんですか?

ズボン下をはいてた。穴の空いてたズボン下。

マゴがヒメに「着替えておいで」て言われて、着替えて出てくるまで時間短いですよね。忙しい場面ですね。

忙しいっ!髪の毛がねぇ、取れそうになったりして。

髪の毛?鬘だったんですよね?

俺?つけてない、つけてない。

長い髪のときと短いときとありましたよ?

エクステンションだもん。

え。

最初の登場のときは帽子の中に入れておいて、芝居が始まったら降ろしてた。途中で(エクステンションが)3本とれちゃって、また付けに行って。

えーええええええええっ。水下さんも長かったんですかっ。

そうですよ。

えー。

だから(普段は)帽子かぶってた。付けっぱなしだったから。

そうだったんですか。あらー。折角だからとらなければいいのにー。

邪魔っっ。


〜市原悦子さん/女形/女優〜

どうでした?「えっちゃん」は。

かわいかったですよ。 市原さんはなんていうか、いわゆる「私は女優」っていうことじゃなくて「いい芝居を作りましょうね」っていう方でしたね。「やりにくいとこがあったら言って下さいねっ」って言ってもらったりして、恐縮してしまいました。

市原さんて、私たちは「まんが日本むかしばなし」のイメージが強いですが。

早稲田小劇場(現・劇団SCOT)に出てたって話は知ってて、フィルムは観てる。「早稲小にも出てたのよっ」っておっしゃってました。

実際の舞台の市原さんを御覧になるのは、今回が始めて?

ですね。

テレビの人だなあって感じですか?

いやいや、舞台の人。俳優座にいらしたし、ずーっと舞台やってらっしゃるし。

独特な声・台詞、ですよね。声が様々に変化して聞いてる側は気持ちいいなと思うんですが、やり取りをしていてどうでしたか?

自然と変わるんですよね。もちろん変えようとして変えてるんだけど、やらしく(あざとく)ない。
  映画もやってらっしゃるけど、舞台の人で、もう映画でも舞台でもそこにあるものが全て。真剣勝負を常にしていらっしゃる。市原さんは、台詞がねぇーっ、無茶苦茶すごかったからねっ。

ええ。言ってる意味がわかんなくても聞き惚れちゃう。

それはある、(身を乗り出して)それはあるっ。聞かせますよね。何言ってるんだか判んないけど、技術だけじゃもちろんないんだけど。上手なんだよね。気持ちも入れながら言ってるから聞いちゃうんだよね。
みんな(客席が)この声知ってるなあ、ってところから入って聞いちゃうってのはあるけど。

女優と女形の違いって何かありますか。いつもは女形相手ですよね。

違いますよ。女だもん。

女だもん?そりゃ、そうだけど。

違う違う、そういう違いじゃなくて、女と偽者の違いですよ。

間の取り方が、とかですか?

それは女優も女形も関係ない、役者の個々の問題。個人個人の間でしょ、男同士でも女同士でも違う。
ある意味女形って偽者でしょ。男女で立ってるって場面でも、言っちゃえば野郎二人が立ってるんであって、片方が女に見える。きれいな女に見えてる隣に居るんだから、偽者で化け物なんだから、そこにまなざしが集まるでしょ。それに負けないように、居なきゃいけない。
相手が女優(本物の女)ならそういう(対バケモノへの)エネルギーは使わない。女形がきれいに見えるってのは、男が(女形を)きれいに見えてるとお客に伝えないといけない。在り方として。感情だけじゃなくて。

市原さんて、水下さんと並んで立つので余計になんですけど、身体的には小さいですよね。でも、常に舞台の中心っていうかどこに居てもさっと眼がいくのがすごいなあと。他を観たいんだけど、眼が市原さんを観てしまう。

そう、すごい人なのよ。
すごくいい経験でしたよね。いろんなものを市原さんからいただけたと思います。何をどうってことではないけど。新劇も商業演劇もいろんなことをやってて、舞台の上での集中とか真剣な気持ちとかね。すごいんだけど、気負いがない。少女のような素敵な人でしたね。

ときめいちゃうような?

ときめいちゃいます。

並ぶと、頭一個くらい違いますよね。

まあ、それはねえ。お客さんからいいカップルに見えてればいいわけだから。

マゴとヒメは一緒にいることが意外と少ないですね。マゴの戦いってなんでしょうか?

本に書いてないから、説明するのは陳腐でしょ?あえて言えば、地下のもの(報われないいろいろな魂とか)を地上に救い上げる、浮かばれない魂を救い上げるってことじゃないですか? オシハノミコは滅ぼされたものの代表って感じですからね。

マゴとヒメの繋がりってどんななんでしょ。

何なんでしょね。いろいろ教えてくれた人なんじゃないですか。出会って啓示があって、母のようであり、主従であり。

自分でやっててどんなイメージですか?

呪術の世界の人で、出会って取り込まれて、発見があって、ヒメに魅了されて生まれ変わっていく。 最期は主従関係になっていくけど。

主従ってことですけど、二人は愛し合っているってことなんですか?

それがあって、発展してくんでしょ。愛し合ってますよ。ヒメは女だから、マゴを飲み込んで、吐き出して、かしずく。うーん。愛し合ってるんですよ。ただ、そういうのは僕がこう、って説明するものじゃないでしょ。それはお客さんが感じて受け止めることですから。

自分では、こんなイメージでとか思ったりするんですか?

そりゃ、本に書いて有るからそれをやるの。

マゴが覚醒する前と後って言うのは、何か気持ちの切り変えとかあるんですか?

そりゃ切り変わるでしょ。そうなっていかないと。変わるように(話が)なってるんですもん。変われって書いて有るから変わるだけ。ちゃんと切り変わってたでしょ?

ええ。

だから、それでいいんです。変わるように(本に)書いてあって、その通りやって、それがちゃんと伝わればいいの。ただ、説明がかなりはしょられてるから、覚醒していく様が判りにくいとこもあるかも知れないけど。どこで変わったって明確にわからなくても、ああ、あそこで変わっていたんだなって、あとから感じていただければ。

マゴのシャベルは、さすがに今回壊さなかったですね。

そういう場面ないですから。振り回したりしないし。

口笛練習したんですか?犬呼ぶときの。

指笛ですね、口じゃなくて。練習しましたよ。北沢が上手いんですよ。なんとなく鳴らせることはできてたんでいけるかなと。何回か失敗もしましたけど。

鳴らない日もあったんですか。

はい。かっちょわりぃ日もありました。(笑) 練習できないからねー。練習で鳴っても本番で鳴らないとしょうがないからね。(小学校の)高学年頃に指笛が流行ったことがあったの。で、まあ、やってみたら鳴ったからこれならいけるかなと。


ゴン太くん?

衣装パレードって何やるんですか?

パレード?どこでやるの?

筋書きに「衣装パレード」やりましたってあったんですけど。

ああ。稽古場でね。そのときの衣装をつけて、並んでみてバランスをみたり。

寸法直しとかもするんですか?

ああ。コートを直しました。最初はもっと、ぱつんぱつんな感じだったので、もっと大きく長くしてもらいました。

そこで、ゴン太君になったのか・・・。

(ゴン太くん)知らないんですよ。

えー?「できるかなって」・・・

観てない。

えっ?のっぽさんも知らない?

のっぽさんは知ってるよ。

のっぽさんは知ってる?

番組みてないから。男の子だったから。

・・・?

外で遊ぶ子だったからっ。のっぽさんが出てた頃は大人だったしね。

全共闘世代じゃないですよね?

下です。全共闘はもっと前。

名残とか、なにかありましたか?

その時代にいれば、そっち(闘争)側だと思う。生きてればね、そこで。 ぼくらはなんもない。学生運動じゃ政治は変わらない、って世代だけど。俺らの学校は学生運動で制服がなくなったとこだから。政治の嵐が去った後だったからさ。高校のクラブハウスには「開放」って旗とかあったけどね。全共闘のころは中学生かな?終わってから高校生で。ベトナム戦争とかは覚えてる。


〜大駱駝艦(若様)〜

大駱駝艦の方達とは(共演は)初めてですよね。いかがでしたか?

それは、そらーあなた方もおわかりでしょ、あの素敵さは。

若様(若林淳氏)とお話されましたか?

しましたよー。飲みに行きました。いい人ですよ、ほんとに。大駱駝艦の人と踊りたかったですよ一緒に。

マゴは踊る場面なかったですものね。

いや、花組芝居連が一緒に踊りたいなーって。(大駱駝艦の人は)ダンスに力があるでしょ。

水下さんて舞踏お好きですよね?

大好き。大好きってか、好きですよ。

大駱駝艦は観たことがおありだったんですか?

ありますよ二回くらい。上野かな?最初は友達に連れて行ってもらったんですけど。 僕らは世代的に、なんとなく舞踏の話が(芝居をやってると)入って来る世代だったから。

へー?

大駱駝艦の最初の頃は知らないけど、ポップなんですよ。僕が見たのは十年位前だけど、色がすごくあったの。白だけじゃなくて。
期間的に舞踏の公演って短いんで、なかなか行かれないんだけど行きたいんですよね。 前に観た舞台で、麿赤兒さんが下手から上手へ薔薇の花抱えて歩くだけなの。それだけでおもしろくて「ずるいなこのおやじ」って思った。きれいだったからね。

(舞踏)やりたいですか?

やりたいですね。

舞踏って、ただ歩くだけなのもありなんですか?

有りでしょきっと。表現だから、結局。スタイルってことは決まってないと思います。ただ、踊ってないとね体ができてこないから。肉体の表現だからね。エネルギーがそこから発せられてるってことですよ。
ただ、(美醜ではなくて)汚いのは駄目ですけど。
舞踏の世界って、詩の世界なんじゃないかな。ポエムじゃなくて詩(し)ね。詩が立ち上がってくる。大駱駝艦は散文ぽいかしら。
そこに、「在る」ってことが大事なんですよ。説明はしてないけど、言葉の数は少ないけど、納得させる何かがある。それがわかるのは、同じ日本人だし、年齢もあるし。共感できる何かがそこにあるのが大事。
人間がそこにいるってことね。人間が朽ちていく、日本人の持ってる「朽ちていく」っていう日本語を体現できてるなあって、感じるものがありますね。
田中泯さんが、東京にいたらね。もっと観にいかれたかもなあ。

何で知ったんですか?

芝居を観に行ったときのチラシにあったんです。田中泯さんは、高校の先輩だったんですよ。

ほー。

ワークショップとかね、行きたいんですけどね。大駱駝艦の合宿とか。参加したいなあ。
小林裕子ちゃん(大駱駝艦/ディヴァ役)がね宮沢賢治が好きなのっ。(嬉)

へー。

お話して、よしよしと・・・

若い娘を・・・

そうそう、騙してね。おじさんがね。(笑)
面白いって。宮沢賢治。舞踏で(上演したら)青い光の中で「たゆたう」って感じで、賢治の言葉を展開するってのはきれいだと思う。そういう可能性がすごいある。

ネタ帳がふえましたね。

つけようとおもうんだけど。忘れちゃうんです。

今回外部が続きましたね。仇討は演出メインでしたが。

感謝しております。加納幸和と、花組芝居の名声に。


〜ちょっぴり弥生のお話〜

『弥生』(花組芝居の会員向けイベント)でございますねえ。お値段が上がりましたね。びっくりしちゃいましたっ!

(にっこり)お楽しみにお待ちください。

すごーく楽しみです。

お客様100パーセントに満足いただけるってことはないですけど。今回も限られた人数の方にしかおいでいただけないですし、だからこそ観に来てよかったなとおっしゃっていただけるものにはしたいですね。けして安い金額ではないのでね。
東京はライブハウスですけど大阪はライブハウスではないので、内容は同じなんですけどね、形状が変わります。
水下は構成責任で走り回っております。ADのよーに走り回ってる水下を楽しんでいただければ。

構成とか着々とやりたい事をやっていってますよね。

楽しいんですよ、構成は。

すごい楽しそうですね。おなかに沢山ためてますか?

いやいやいや。できないのが楽しい。大変だけど楽しい。役者ってのは自分が作ってる楽しみがないじゃないですか。

曲の順番とか、全体の構成を?

そうそう。

演出は楽しいですか

楽しいっていうか、大変なのが楽しい。すごく伝えることが難しいんだけど、ちゃんと伝わって、ちゃんとっていうか、出来上がったときがすごく楽しい。

七月に芝居をなさると言うことですが。

銀座でやります。演出のみですが。

出演されないんですか?

演出のみですね。

演出専念。

はい。
芝居って誰かの目がちゃんと出来上がりを追いかけて、トータルで確認できてないと駄目だと思うんですよ。だから、部分的に「これはどうかな」ってこともありますけど、全体で見たときにそれがあったほうが良いなら残しておけばいいし、逆にそこの部分がすごい面白いけどそこだけ出っ張って全体からはみ出しているのであれば、切り取らないといけないし。
そういうしんどいんだけど、しんどいのがすごく楽しい。

だから、稽古中一番テンション高いのは演出かもしれないですね。ずーっと、High。
集中ってことでは、役者としてそこ一点に向かってるってことで、役者(をやってる時)の方が集中してるかもしれないけど。俺はね。

演出って、伝えることだと思うんですよ。だから何をして欲しいかを伝える必要がありますよね。 細かく言わなくても鍵をさっと開けることができちゃう人、たとえば市原さんみたいな人もいるし、 鍵の使い方を言わないといけないこともあるし、鍵がどこにあるかを説明しないといけないこともある。
そういうやり方を演出は考える。考えて考えて、万策尽きてのた打ち回って、次にそこに来るものをみつけるのが楽しい。
役者だからね、役者やりたくなっちゃうんだけど、(役者と演出とで)スパッと切り替えが僕は出来ないので。
役者の気持ちとしては「こんなにいいのに」ってことも、演出で考えるとNGだったりしますから、その辺の切り分けができないといけないんですけど、役者やりながらだと気持ちが役者側に引きずられてしまう。だから演出するときは出番の多い役は出来ないです。

『仇討』で演出をやらせてもらえて、すごいありがたい経験でしたね。だから今回の七月もやれるかなあと思うんです。
ただね、演出は怒鳴ることが仕事じゃないですから。怒られて出来るようなもんじゃないですからね。 こうやれーって、怒鳴って「はい、はい、やります」って口だけ言っててもわかるからね、ちゃんと理解できてるかどうかってのは。
前にも話したかもしれないけど、

だからさー。(椅子にもたれかかって。)
だからさっっ(驚いたように。)
だからさ。(さもありなん、という具合に。)

『だからさ』ひとつでもいろいろあるわけじゃない。で、どういう気持ちで言ってる「だからさ。」なのかがお客さんに伝わることが大事なんだよね。それをどうやって見つけてもらうかっていう手助けとかをね、していくのが演出なんじゃないかなと思います。
だからそれは、俺が要求してることを相手に伝えるためにコミュニケーション(擦り合わせ)は大事だよね。

今年は「マンスリー水下」ではないですが忙しいですね。

今年は、もう、もう、忙しいです。頭が大変です、頭悪いから(笑)。
でも周りに才能ある人いるから使わせてもらいます。

今後も楽しみにいたしております。本日はお忙しい中有難うございました。

有難うございました。

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