帝国:(以下帝):本日はありがとうございます。
水下:(以下水):いえいえ。
帝:ご無沙汰しています。ONE-DAYのご準備はいかがですか?
水:あー、あと10日しかないんだよねー。何作ろうかな。
帝:今年は帝国一同、花組の追っかけに専念しまくりですので、ひとりかいをお休みさせてもらってます。
でも水下さん企画として1日ですが開催されるのは関西のファンには嬉しいことですね。
水:そうですね。そう思って頂けると僕も嬉しいです。
帝:お酒は飲めますか?
水:まあ昼間なので、ビールと泡盛とラムかなんか考えてます。そんなにたくさんは出せないですけど。
帝:久々の水下シェフですね。お一人で何でもやるのはお忙しいのでは?
水:料理はさっと出せる様に準備しておきますよ。3品くらいで考えてますが1日だけなので余ってももったいないしなぁと。
帝:食事は何を作る予定ですか?
水:ひとつはグリーンカレー。 これは美味しいと思います。
あちこちで食べててさ、「これなら俺が作った方が上手いじゃん」と思う事が結構あるんだよね。
とっても美味しいところは勿論美味しいけど、この程度の材料で値段で・・と考えると
「何だ、俺の方が全然いいじゃん」ってさ(笑)
帝:ちなみにそのコツは?
水:砂糖とレモンとナンプラー。普通のペーストを使うんだけど、これを足さないとあの独特の味わいが出ないんです。
特にレモンとか、酸味をちゃんと入れてるとこって結構少ないよね。
あとはピタかな。サンドウィッチだと手間掛かるので、ピタならこう、わっと挟めばいいので。
それから、スープにしようかなぁ。温かいのか、冷たいのか・・
あ、今思いついたんだけど、枝豆の冷製にバゲットつけてってのもいいよね。
帝:美味しそうですねー。
ゴハンも楽しみですが、今回は何をお読みになりますか?
水:ブログ(店主の気まぐれ日記*リンク*)にも書いたけど、『左手の恋』から二つ読みます。(工藤)千夏に許可は貰いました。
それと、最初は『双子の星U』を読もうと思ってたんだけど、アイヌのユーカラ(叙事詩)で新ユーカラって面白いのが有るのでこれをやるつもりです。鯨が出てくるの。
帝:鯨・・夏っぽいですね(笑)
水:でしょ?
それから詩をいくつかやります。
あとはね、花組の四谷怪談を考えてます。1990年にパルコパートVで演ったやつのビデオから起こしてるとこですよ。
勿論、短くまとめるんですけども。今、その編集をしてます。
それでね、今日(於岩稲荷に)お参りに行ってきたとこなんです。
帝:え、台本を読むんですか?
水:いやいやそうじゃなくて、こんな話だったんだよって、情景が浮かぶような形で話そうかなと。花組アーカイヴ的にね。
そのあとに定本ってのを演ってますけど、この四谷は知らない人がほとんどじゃないかなぁ。
帝:夏なだけに怪談ですか!それじゃ全体で結構なボリュームに?
水:そうでもないかなぁ。お客さんに食べて飲んでもらって、二つ位読んで、また30分くらい休憩入れてその間にオーダー取ってサーブしたり・・そんな感じ。
帝:では水下オーナーのお店にちょっと遊びに行く感じで、昼から軽く飲んだりしながらのゆる〜い感じでいいんでしょうか。ご飯食べに行こうっ!とか。
水:はは。そんな感じの方がいてもいいんじゃないかな。とにかく楽しんでもらえれば。
帝:今回は昼間だけでしたね。確か夜は別のイベントがあって・・
水:なので、終わりの時間がありますからお客様にはその時間でご退出願うことになってしまいます。
僕も片づけしなくっちゃ(笑)
帝:・・・本選びよりメニュー作りを頑張ってるようですけど?
水:いやいやいや、どっちもです。
まあ、おいしいもの何か作りますから。ほんと、何にしようかなぁ。
帝:このONE-DAYの後はしばらく夏休みですか、それともすぐにお稽古に?
水:稽古は秋からですが、頭の中にはいろいろとあります。
帝:DCさんの居残り佐平次ですね。
落語にもありますし(映画の)幕末太陽傳もそうですが、知らない方の為に粗筋をお願いします。
水:遊郭の話なのね。男連中がみんなでわーっとやろうってことで遊びに行くの。
お座敷で遊んで、気に入った妓が居たらそのまま・・って、そういう場所のね。
飲んで騒いで、まあみんなは遊んで帰るけど、俺は残るよっていう奴がいる。支払いの金は先に帰った友達が持ってくるから待ってくれって言い張ってそれが
1日経ち2日経ち・・とそのまま何日も居残るので、「そろそろお代を」と言うと、持ってないと開き直る。
佐平次って「居残り」ってのを商売にしてあちこちの遊郭を転々としてる男なんだよ。
それがなかなか気が効いてて揉め事を上手く解決したりもするもんで、下手な下男より使えるってんで布団部屋あたりに居候してるうちに人気になっちゃうんだよね。
それを周りに疎まれて、旦那も仕方なしに出て行ってくれとお願いすると「羽織を頂戴したい」と言われて・・ってのが落語の方かな。
今回の舞台は次郎長が出てくるんですが、幕末の江戸見物帰りに品川に寄って、ある妓を気に入るの。
その同じ妓を薩摩の浪士が気に入って・・
帝:まさしく恋の鞘当て、と。
水:そう。それで(女をめぐって)勝負、ってことになるんだけど、でも大政が言うには「親分、負けますよ。相手はとても腕が立つ」と。
本当に強い相手なんだよ。
そこを佐平次がどう上手くまとめるか・・って。そういう話です。
帝:面白いですね。
水:またそれがね、粋、なのよ。どっちも上手く収めてさ、「野暮は無しだぜ」って感じでね。
その粋なところがいいの。
で、遊郭の話なので、普通の場所とは違うちょっと特別な、異次元みたいな感じにしたいなと思ってるんです。
帝:前進座は花道があるんですよね?
水:花道って良いよねぇ。この前ラジオでも話したんだけど。
ちゃりんっと(揚幕が)鳴って、お客さんが振り返って、役者が出て七三で見栄切ってね。
役者はお客さんいじったりなんかしてさ、まだ役と素の境目の感じでいるんだけど、それがたたたたーっと舞台に向かうと自然にそっちの世界に入ってる。
最近は少なくなってるようですが、もったいないよ。あれはほんと良い。
舞台に向かって縦の線が出来て、すっと空間が立体的になるんですよ。
帝:勿論使うんですよね。
水:そう、台本が元々そうなってますし、明治座の公演もそうですから。
けど元が商業演劇だから、休憩込みで3時間近いのかな? 長いのね。
それをなんとか2時間30分程度に収めようとしてるので、ちょっと考えてます。
帝:幾らかカットなさるのですか?
水:前進座ね、退出時間が9時半なの(苦笑)役者がこさえた小屋なのにだぜーっ。
女の子達はお女郎さんだから白粉も塗ってるし、着替えとか考えると短くしないと間に合わないんだよ。
だから開演が6時半になったんです。
帝:ぴあに情報がありましたが、6公演と割に少なめじゃないですか?
水:その分、広いですから!皆さん是非是非いらしてください。
帝:配役は・・
水:ふふ。いろいろ想像してください。
でも自分一人でなくて中尾さんと関さんと3人で決めてます。今回はそれぞれが配役を考えて持ち寄って、それで相談してます。
何度か一緒に仕事もして来ているので、自分もそれなりにDCの皆さんを知っている部分がありますし。
帝:演出について(中尾さんから)いろいろリクエストはあるのでしょうか。
水:いや、全然。
アドバイスは勿論いろいろ受けてますし、どうですかって訊いたりもしますけど、演出に関してはないです。
もうね、「あなたにお任せしたのですから」と。
帝:おぉ中尾さん、ですねぇ。
水:いや、ほんっとそうなの。漢ですよ。
だからね、本当にきちんと、いいものにしたいと思ってます。
DCさんは15周年なんです。その舞台を任されたのですから。
DCさんのファンの方や僕の演出に興味ある方だけでなく、全然知らない方がみても「ああ、面白かったね」と楽しんで頂ける。そんな舞台にしたい。
とにかく、良いものにしたいと思って頑張ってます。
今はほんと、それが僕にとって大事なことなんです。
帝:では年末の忠臣蔵は・・・?
水:それは役者で出るわけですから、また別ですよ。勿論、頑張りますよ!
本番と花組芝居の稽古が重なってますが、それはうまく調整してます。
帝:DCさんは15周年、花組芝居は20周年ですね。前半戦終わりましたがいかがでしょうか?
個人的には先日の「恐怖時代」がとても好きなお芝居でした。
若手の皆さん、活躍なさってましたね。あれでまたファンがぐっと増えるかと。
水:うちの若手はみんないいですよ。また加納がね、その良さを引き出しているんだよね。
彼らは桂達の世代以来、まとまって何人か入ってきたって新人達なんですよ。
同期がいるってのは、独特の良さがあるの。なんてのかな、互いに高め合って行くというかね。
たとえば、俺らとあんまり話さないようなことを仲間内で話したりするんだよね。
歳の近さでなく同期として、そういう相手がいる。そこでまた違うものが互いから出てくるんだよ。
桂の世代がまさにそうだったね。
帝:いや、ほんとにびっくりするくらい皆さん良かったです。
そして衣装は浴衣だけで小道具もシンプルなのに華やかに見えましたし、華麗な中に残酷さや毒もあり滑稽なのに恐ろしい。
花組芝居の持つ芯の部分というか、「花組らしさ」を色濃く感じました。
スズナリなので昔の舞台とオーバーラップするところもあって・・昔話ですみません。
水:あのスズナリみたいな空間でやるのは大事だって、僕はいつも言ってるんです。
狭くてぎゅっとしてて、一番後ろからでもなお近いような距離感がね。
帝:でも今の花組ではキャパが足りないのでは?
水:それでもいいんです。広いところでもやって、スズナリでもやって。いろんなとこで演っていかないと。
あの狭さ、いいでしょう?
若手もあの舞台で、自分達が気を抜かないでしっかりやっていかないと成り立たない様な役を貰って、とてもいい経験したし成長したと思いますよ。
うち(花組)に来て、加納という才能に出会って、舞台でもっと何でもしていいんだということを知って、(芝居を)やってて楽しい、良かったと、まだこんな事もできるんだといろいろ感じて欲しいです。
伸びしろがありますから、みんなもっと伸びますよ。
帝:それを受け止める中堅、ベテランがいてこそですね。
若手の活躍ぶりに「中堅・ベテランにとっての『恐怖時代』だね」なんてうまいこと言ってた人がいますよ(笑)
水:いやいや、負けませんからね。若手が入ることで僕らも刺激を受けますし。
この前(佐藤)誓が見に来てくれてね、「負けないように頑張れよ」なんて言われましたよ(笑)
忠臣蔵はねー。まだまだ!掛かってこいよ!と。俺は絶対負けないよ!(ガッツポーズ)
帝:ここ、赤文字で太文字で書いておきますね。
「勝手に下北まつり」ということで、次は来月の『ザ・漱石』。本も演出も大野さんなのですよね。
水:そう。もともと彼は演出がやりたいという事で入ってきて、自分で本を書いて加納に持ってきてたりしてたんです。
僕も何度か「ここは直した方がいい」ってアドバイスしたりしましたよ。
帝:それは座長から書いてみて、ということで?
水:いや、本人自らです。結構前からなんですよ。
そしてこうやって機会があって、彼のお芝居がいいなーと認められて、また演出部希望の人が入ってきてくれたりなんかしたら嬉しいですねぇ。
帝:チケットが恐怖時代と組み合わせて一続きになってて綺麗ですよね。
水:でしょ、いいでしょあれ。
そうやって是非両方いらしてくださいね。
帝:さてさて、20周年ということで・・
いきなりな質問ですが、この20年というか今までに「役者を辞めよう」なんて思ったこと、あるんですか?
水:そりゃあ2度3度はありますよ。・・いや、本当に辞めようと思ったのは1度かな。
帝:それはどうしてか訊いていいですか?
水:役者じゃない、別な事をやろうかなと思った時期があったんです。
別の仕事をして、普通にお勤めして暮らしてって。
でもやっぱり自分の真ん中には芝居があって、それがないのは自分じゃなくなっちゃうなーって思ったんですよ。
自分はすごーく見栄っぱりなので、良い暮らしもしたいしお金も欲しいし。格好つけたいじゃない。
でも、その為に芝居が出来ないんだったら、格好つけないで芝居やってる方がいいなって思える様になったんだよね。
僕はお金持ちでもないし名もそんなにないけど、どんな人を、それこそ地位も名誉もある人を相手にしても気後れはしない。
それは、自分のやりたいと思うことを今まで自分なりに精一杯やって来ているからだと思うのね。それがお芝居、舞台なんですよ。
だからこの先もずっと芝居には携わっていきたいと思ってます。
帝:是非是非そうあってくださいませ。
そういえば、この20年の間に紋が替わりましたよね。
水:僕だけかな、3回も変わってるのは。
最初は団栗を重ねたので三葉葵みたいなやつで。 そのあとにラグビーボールと蝙蝠に。
それからこの間の四谷怪談で伊右衛門の衣装に紋を入れた時に蝙蝠だけになって。
帝:それは自分で替えるのですか?
水:いや、加納が(笑) 四谷の時にいろいろ紋を書いてて、「これこれ!これがいい!!」って(笑)
帝:でも蝙蝠は変わらずで、やっぱり水下さんと言えば蝙蝠ですよね。
水:そうなの。蝙蝠の図柄のバッグとか持ってると「それ、紋ですか?」なんて訊かれるし。まあどっちもアリの蝙蝠だからさ、俺。わははは。
帝:どっちにもいい顔するってヤツですね。水下さんって結構浮気者ですよねぇ。
水:そうそう浮気者。浮気というか、あれもこれもいいなって思っちゃうのね。
だって、どっちもいいんだもんしょうがないじゃない。
帝:役者もやりたい、演出もやりたい・・・
水:それは全然別だもん。
あ、今はね、お酒作ってみたいの。
南の島に住んでさ、タイとかそのあたり。それで泡盛とか作って。
年に2回くらい芝居しに日本に帰るの(笑)
帝:うわー、南の島! ある意味似合いすぎですよそれ。
そしたら向こうでひとりかいしましょう! 10人位あつめて、ツアー組んでいきますから。
水:浜辺に椅子ならべて酒飲みながらとかいいね。
高波でも来たら各自勝手に逃げてくださいよ。
そんで「あ、水下さんがいない!」とかなっちゃったりしてさ(笑)
ほんと、お金持ちだったらそうしたいな。老後じゃなくて、今体力があるうちに、南の島で暮らしてゆかれるか自分を試してみたいんだよね。
帝:それで年に2回だけ、芝居の時期にあわせて帰国すると(笑)
あれ?55歳までは突っ走るんじゃなかったんですか??
水:あ、言われちゃった(笑)
そうですよ、勿論、走ります!
帝:南の島にいても、演出やなにかで外の仕事をしても、自分の居場所は花組だと。
水:そう、それは本当にそう。自分の居場所が、花組芝居っていう帰れるところがあるからこそ自由にやれるんですよ。
やっぱり花組は基本なの。
あんな劇団って他にないでしょう? 他にあんな風にできるとこってないですよ。
それこそ花組芝居だけ、なんですから。
帝:花組は懐の深い、いい女なんですねぇ。
水:そうですよ。
だから、(役者も演出も)どっちも頑張ります。とりあえず今年の年末まで、走りますよ。
帝:その前にONE-DAYをお忘れなく(笑)
おいしいごはんとお話、楽しみにしています。
今日はありがとうございました。大阪でお会いしましょう。
水:こちらこそ。では、大阪で。
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